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家業から企業へと変わるために必要な3つの施策

組織

家業は企業規模ではなく組織構造として捉える

自社のビジネスの大きな転換点として、家業から企業へ変わらなければいけない時期、変わりたいと思っている経営者は多くいることでしょう。
一般的に「家業」というと、いわゆる「パパママ」で経営している個人商店や、従業員が10名未満、などその「形態」を表現している場合が多いですが、年商5億円の会社でも従業員が30名いる会社でも、その会社の「構造が家業」となっている会社が非常に多いです。

家業という「形態」ではなく、「構造」で表現すると以下のような特徴が挙げられます。

・社長が自社の売上の半分以上を稼いでいる
・安心して仕事を任せられる社員がいない
・社員を統制する仕組みが社内にない

これらのように構造的な意味での家業というのは、社内で特定の人材だけが突出して能力が高く実質的にその人材一人で切り盛りしている会社だと言えます。つまりそれは、その人材が会社からいなくなってしまった瞬間にその会社が「倒産の危機に立つ」ような会社とも言えます。

当社の顧客で、会社の売上が「年商5億円」の会社や「年商20億円」の会社でも、自社が家業のままだと感じている社長が多くいます。そういった社長はよく「結局この会社は私の個人商店のままなんですよね。」ということをおっしゃいます。従業員が増えて組織が大きくなったように見えても、その組織構造が上記のような家業のままであれば、売上が鈍化する時期が必ずやってきます。その時期こそがまさに家業から企業へ変わるべきタイミングです。

家業から企業へと変わるために

現在の家業という組織構造から卒業し、本来の意味での「企業」としての組織構造へと変革していくことが、家業から企業へ変わるポイントとなります。家業から企業へと組織構造を変えていくにあたって、当社では3つの施策を推奨しています。

家業から企業へと変わるために必要な3つの施策【1】

家業から企業へと変わるための1つ目の施策は「社長が自社の売上の半分以上を稼いでいる」という組織構造から「社長以外の従業員が売上を上げられる」という組織構造にしていくことです。

家業の組織構造の特徴の1つである「社長が自社の売上の半分以上を稼いでいる」状態の場合、やむを得ず社長が出社できないような事態が起きた瞬間に売上が半減してしまいます。そのようなリスクが高い状態の会社のままでは、いつまでも社長が営業現場から離れることができず、いつまでも家業のままの組織構造となってしまいます。

また、社長が一番稼ぐという組織は往々にして「社員が育たない」組織になっている場合が非常に多いです。社員には「社長が売上を上げてくるから大丈夫」という悪い意味での潜在的安心感が与えられ、日々の研鑽を忘れてしまいます。また、社長が売上を上げれば上げるほど「社員の機会を奪っている」という見方もあるでしょう。
そのような状態ではなく、社長以外の従業員が売上を上げられるようになり、社長が稼いでこなくても会社として売上を上げ続けることができる組織にしなければいけません。

家業から企業へと変わる過程の中で、こういった組織構造にしていくことが大事ですが、とはいえ「今すぐに社長が営業活動をしなくなる」というのは非常に危険です。この言葉だけを捉えて、翌日から社長が営業現場に出なくなってしまった途端に恐らく売上は急激に下がってしまいます。

そうではなく、徐々に社長が営業現場に出なくてもいいようにソフトランディングしていく考え方です。

例えば、年商5億の会社の社長の自社内における売上シェアが「家業」である現時点で60%の3億円の場合、従業員数名が残りの売上シェア2億円、40%の状態です。この会社が年商8億を達成する場合においても社長の売上額は3億のまま、従業員が5億を稼ぐことで、自社内の売上シェアは社長が約38%、従業員が約62%という形で「シェア配分」を変えていくようなイメージです。

このような従業員が売上を上げられる組織構造をつくることにより、徐々に社長の売上額も減らすことができる、つまり社長が営業現場に出なくてもよい状況をつくり出すことができます。この状況がまさに家業から企業へ変わっている組織構造の1つです。

社内に「黒字社員」を量産する

家業から企業へ変わるために、このような組織構造をつくるにあたっては、社内に黒字社員を量産する必要があります。

ここでいう黒字社員の定義は「自分の給与の3倍の粗利益を稼いでくる社員」の事です。当然、売上から原価が差し引かれるわけなので、粗利益という数字が重要です。営業社員は自身の分だけではなく自身の活動を支えてくれる非生産部門の社員分も稼がなくてはいけません。
営業社員1名に対してそのサポーター社員が1名という体制で考えると、自身の給与の2倍の粗利益では「トントン」、ちまり収支0になるため「3倍」が目安です。

このような「黒字社員」が多ければ多いほど、経営の観点からの安定性が増し、社長が稼がなくとも順調に売上を伸ばせる会社になることができます。そしてその組織構造をつくり出すことが家業から企業へ変わる1つ目の施策です。

家業から企業へと変わるために必要な3つの施策【2】

家業から企業へと変わるための2つ目の施策は「安心して仕事を任せられる社員がいない」という組織構造から「社員に安心して仕事を任せられる」という組織構造にしていくことです。

安心して任せられる社員がいない会社の状態では、社長は常に従業員の行動に対して目を見張っていなければならず、またそういった組織ほど従業員が大きなミスをしたり、細かいミスが頻発します。そうすると社員の行動やミスへの対応は、社長が直接行ったり介入したりするなど、社長の時間がネガティブな対応ばかりにどんどん奪われていきます。

社長の時間の使い方が自社の売上に直結することは言うまでもありません。安心して仕事を任せられる社員がいなければ、そのような社員の仕事に対して社長自身が時間を費やすことも多くなり、結果的に「将来の売上を創り出す」という社長本来の仕事に費やせる時間が少なくなってしまいます。この現象は表面化していませんが、潜在的に会社の売上停滞につながる要素と言えるでしょう。

業務の標準化とマニュアル化

こういった組織構造を変え、家業から企業へと変貌を遂げるために、自社の業務の「標準化」そして「マニュアル化」をしていきましょう。何が「安心して仕事を任せられない状況」を生み出しているかというと、その多くは従業員の「業務スキル」によることがほとんどです。

業務スキルは日々の仕事の中で習得していくことはもちろんですが、社内における業務手順とノウハウを蓄積し、それを標準化・マニュアル化していくことで更にスピードと効果を高めることができます。

業務を標準化することで従業員がやるべき事が明確になり、効率性が上がります。また、業務手順とノウハウが蓄積されたマニュアルがあれば、効率的かつ効果的に業務を進める事ができます。

家業の特徴として「その場その場で対応する」というレスポンス組織になっている場合が多いです。確かにその場のアドリブ対応というものは、スピード経営が求められる中小・零細企業にとって必要なものではありますが、その状態のままだと「ノウハウ」が社内に蓄積されません。これは非常にもったいない事であると同時に、その場対応の解決をすると同じミスが起こる可能性も高まります。

業務の標準化・マニュアル化をすることで、効率的かつ効果的に従業員が業務を進められ、またスキルを上げていき、同じミスを繰り返さないような組織構造にすることで、社長が安心して従業員に仕事を任せられるようになることが、家業から企業へ変わる2つ目の施策です。

【※参考】徐々に小さい権限から移譲

家業から企業へと変わっていく中で「社長が全ての意思決定をしている」という状態から「社長がしなくてもいい意思決定を社員に任せる」という組織にしていく必要があります。会社の命運を握る重要な意思決定に関してはもちろん社長が行うべきですが、それ以外の細かい意思決定に関しては社員に任せられるよ徐々に小さい権限から移譲していきます。

全ての意思決定を社長がしている状態の組織は、社長が物凄く多忙になります。社員から一日に何回も意思決定を仰ぐような質問や問い合わせがやってくるので、その対応に必要以上に時間を取られます。また、中小企業の一つの競合優位性である「スピード対応」「素早いレスポンス」なども、意思決定が一点集中であればその良さがなくなってしまいます。そのような組織ではなく、社長がしなくてもいい意思決定を社員に任せられるような組織にしていかなければいけません。

家業から企業へ変わっていく中で、こういった権限移譲は避けて通れない道です。従業員が多くなればなるほど、意思決定をする案件が多くなり、また社長一人が目の行き届く範囲を超える組織となります。
従業員が増えていく中で、必ず社長がしなくてもいい意思決定の案件が無数に出てきます。しかし、それらの対応をすればするほど、社長が会社の未来のためにすべき仕事、つまり社長本来の仕事に費やせる時間が少なくなってしまうのです。会社の将来に向かって「次の一手」を打つことが出来なければ売上は当然停滞していきます。権限移譲ができるような社員教育を行い、社長が経営者本来の仕事に集中できる環境と時間をつくり出せるかが、家業から企業へ変わる1つの要素と言えるでしょう。

家業から企業へと変わるために必要な3つの施策【3】

家業から企業へと変わるための3つ目の施策は「社員を統制できる仕組み」をつくることです。

これは、先述した家業から企業へと変わるための施策【1】と【2】にも関連することですが、いずれにおいても「あれこれ社長が介入せず、社員だけでもある程度会社が回る」ように「仕組み化」をしていくことが、家業から企業へと変わるためには必要なのです。

家業の特徴の1つに、社長のリーダーシップで従業員を引っ張っていく会社運営の状態が挙げられます。これは、社長自身が従業員一人一人に「目を配り」「気を配り」差配することによって成り立っている状態であるため、良い意味での安定経営は実現できますが、悪い意味では社長への依存組織だということです。

この状態のままでは社長1人のパフォーマンスの範囲のみが会社に反映されることになり、売上が停滞していく可能性が高くなります。

社員同士でマネジメントできる仕組みを

社長があれこれ介入せずとも、会社が社員のみで回る状態をつくり、家業から企業へと変わるために、社員同士でマネジメントできる仕組みをつくりましょう。

社長のリーダーシップという影響力は残したまま、社員が社員をマネジメントできるようになれば、仕組みで社員を統制することが可能になり、自然と会社がスムーズに回ります。仕組みがない会社ほど「社長が忙しいのに儲からない」という状況に陥っています。

多くの経営者が「家業から企業へ変わりたい」と言っている意味は、この「自分がいなくても回る会社」を指しているのではないかと思います。社長の個人商店からいかに従業員が自発的に活躍し、会社を回していけるかが「家業から企業への変貌」そのものではないでしょうか。

「組織」であることは「仕組み」がある、ということと同義だと当社では捉えています。

【※参考】社員に少しでも経営目線を

家業から企業へと変わっていく中で「従業員が経営目線をもって仕事に取り組む」という組織にすることも重要です。
これは従業員に対して最低限の経営感覚を身につけてもらうという意味です。経営目線で一番分かりやすく、そして従業員にも意識をもってもらいやすい項目は「経営数値」です。もちろん営業社員であれば「売上」や「粗利益」などには意識をもっている場合もありますし、製造や調達などの部門の社員であれば「原価」というものに意識が向いている社員もいるでしょう。
そして経理部門であれば「販管費」を意識しているはずです。これらは部門単位では最終的に利益を出すという意識は共通していますが、これらの経営数値はえてして相関関係にあります。

例えば売上を上げようと思った時にある程度の投資が必要な場合は、原価や販管費が上がりますし、原価や販管費を抑えようと思ったら売上が上がりづらくなる、という形です。それぞれの部門での「正義」が、会社全体から見た時に逆説してしまっている会社は非常に多くあります。

そうではなく、営業利益や純利益など、最終的な利益がどのように算出され、そして従業員にどのように関係するのか、という観点で経営数値を全部門、全社員が認識する必要があります。自部門だけではなく会社としての「最適解」を出すための経営目線が全従業員に養われることによって、部門間でのつまらないいざこざや言い争い、または戦略遂行スピードの低下などを防ぐことができます。

いかにして従業員に少しでも経営目線をもってもらうかが、家業から企業へ変わる1つの要素と言えるでしょう。

家業から企業へと変わるために必要な3つの施策 まとめ

以上のような形で、家業から企業へと変わるために必要な3つの施策を解説しました。
誤解いただきたくないのは、決して家業のままでいることが悪いわけではありません。安定経営を目指すのであればむしろおススメの経営形態ではないと思います。ただ、現在の家業のままの状態で将来的な限界を感じている会社や、家業から企業へ変わりたい、という会社にとってはこういった施策で家業から企業へ変えていくことを推奨しています。

 

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著者情報
佐々木 啓治 / WITH株式会社 代表取締役

日本で唯一の「年商30億円の壁」超えに特化したコンサルタント。

これまでサポートしてきた企業の徹底的な分析を行い、年商10億円で数年間停滞している企業が年商30億円を超えるためのノウハウを独自開発。

顧客企業の経営者からは「斜陽業界である当社のような会社でも、本当に年商30億円を超えることができた」「これまで5年間、年商10億円で停滞していたが、お陰様で昨年目標であった年商30億円に到達した」と高い評価を得る。

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